SD戦国伝サイト 武将髭

ざっくばらんな作品研究レポート。

BB戦士とは? 千力は千生の生まれ変わりか? 大旋鬼頑駄無の謎
BB戦士以外で商品化されたキャラクター 作品名マーク早見表 模型オリジナル形態
SD戦国伝を作った人たち 天下統一編のラストを考える

SD戦国伝ムリクリ論証
第2回「天下統一編のラストはいつの時代か?」


天下統一編の最終回である四代目頑駄無大将軍のコミックワールドのラストシーンは、

黒魔神闇皇帝と戦う初代大将軍の元に、二〜四代目大将軍が駆けつける。

四人の力を結集して初代大将軍が黒魔神闇皇帝を攻撃し、爆発。

暗転のコマの後、四代目大将軍が目を覚ます。

周囲には副将軍など風林火山編の人物と共に歴代大将軍もおり
「歴史は変わったのだ。よくやったぞ!」と四代目を労う。


という一連の流れの後、大勢の人々が四代目を囲むコマで幕を閉じます。
SD戦国伝三部作のフィナーレに相応しい情景ですが、疑問に思う点もあります。


このシーンを見て感じる疑問点は、
「初代大将軍の時代のはずなのに、なぜ風林火山編の人物がいるのか?」
「四代目が目を覚ました(つまりそれまでは眠っていた)のは何故なのか?」
まずはこの2点です。

前者について個人的には、「四代目と共に風林火山編の人物も
初代の時代にワープしてきたから」だと思っていました。
ただしその場合、「殺駆頭や若殺駆頭はどの時代から連れてきたのか」
などの疑問も残ります。
復活闇将軍の鎧を割られたタイミングの殺駆頭や若殺駆頭を
三代目と共に連れてきたとすれば辻褄が合わなくもないですが・・・


しかし、2020年にガンダムベース東京で開催されたイベントで
武者七人衆編〜天下統一編の当時の企画書が展示され、
その中で天下統一編のラストは以下のようになっていました。


(一部のみ抜粋)閃光と共に璽威武装に乗った三人の大将軍が現れたのである。
希望を取り戻した初代大将軍と三人の大将軍に繰り出される攻撃に
黒魔神闇皇帝はなすすべもなかった。
「三人の結晶パワーを初代大将軍の結晶に授けるのだ!」
四代目の掛声と共に三人の結晶パワーが初代大将軍の結晶に集まり、
四人の、いや平和を願う全員の怒りが黒魔神闇皇帝に命中した!
一瞬、すべてのものが白い光りに包まれ、邪悪なる闇は消え去った。
三人の大将軍もそれと同時に元の世界へ戻るように消えたのである。
荒烈駆主は周りの賑やかさで長い夢から覚めたように目を開けた。
「ありがとう、四代目!」天地城の大将軍の間で目が覚めた荒烈駆主の周りには、
初代も二代目も初代将頑駄無となった雷も、すべての仲間が無事な姿で
彼に感謝の握手を求めてきたのである。



企画書の段階ではこのような展開だった事が分かります。
この通りの内容なら、上記の2点の疑問もすっきりします。
つまり四代目は元の時代に帰ったのであり、
目を覚ましたのは、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で
マーティが別の時代に飛んだ時のお約束として眠っている状態から
「〇〇だって!?」と言いながら飛び起きるアレのようなものだったのです。


ですが、実際に描かれたラストシーンは天地城ではなく悪無覇域夢山の近くです。
元の時代に帰ったとしても、そんな所で寝ていたのは何故なのか・・・。
「歴史は変わったのだ」と説明しているという事は、たった今帰ってきたばかりの
タイミングだったという事だが、そんな時に悪無覇域夢山が見える場所で寝ている
荒烈駆主の周りに大将軍や大勢の人たちが集まっているという状況は一体何なのか・・・。



ここから先は細かい辻褄合わせの考察ですが、以下のような可能性が考えられます。

1.爆発のショックで未来に飛ばされ、その際に気絶した。


八紘の陣で過去に行った時とは逆の現象が起きた(つまり目を覚ますシーンは
三代目大将軍のコミックのラストと対になる演出だった)という事です。
しかしこの場合、なぜ歴代大将軍やその他の人々が四代目の飛んでくる場所を
分かっていたかのように集合する事ができたのかという疑問が残ります。


2.黒魔神闇皇帝を倒した後、四代目は璽威武装で未来に帰った。
その際に、目的地の時間と場所を誰かに教えていた。


無理やり辻褄を合わせてみました。
いつどこに飛んでくるのかを知っていれば、待ち構える事は可能です。
眠っていたのは、やっぱりワープのショックで気絶していたのでしょう。


ドラマ的な流れを考えるなら1、辻褄を合わせるのを重視するなら2でしょうか。

いずれにしても、最終回の最後のコマでは「今や大将軍たちと殺駆頭はそれぞれの国を治め
栄華を極めていた。四代目も新たな国を治める事になるだろう」と書かれており、
ラストシーンが黒魔神闇皇帝を倒した直後だとしたらなぜ二代目や三代目が早くも国を
治めているのか(そしてなぜ四代目だけこれからなのか)という割と大きな疑問だった部分も、
四代目が未来へ帰ってきたシーンだとすれば問題はなくなり、
企画書の内容から大きくは変わっていないシーンであったと思われます。

天地城で目覚めるよりは悪無覇域夢山をバックにした方が
絵的に映えると判断したのかもしれません。


論証第1回と同様に、年表的にまとめると以下のようになります。

年代

出来事

備考

天下統一編

四人の大将軍が黒魔神闇皇帝を倒す。

 

武者七人衆編

二代目大将軍、帰還。

天下統一編前後に誕生した雷凰頑駄無が成長して30歳くらいになっているはずだが、ここに二代目大将軍が現れる事でどうなるのかは不明

風林火山編

三代目大将軍、帰還。

ここにも三代目大将軍とほぼ同年齢の「武者頑駄無」が存在するはずだがそのあたりどうなるのかは不明

風林火山編の少し後くらい?

四代目大将軍、帰還。

二代目大将軍が爆死する事もなくなったので農丸が輝くかけらを追って荒烈駆主を見つける事もなく、武者荒烈駆主自体存在していないかもしれない・・・?

歴史が変わった世界に帰ってきた大将軍たちとその世界で誕生している(かもしれない)
自分との関係まで気にし出すとキリがありませんが・・・
未来へ帰ったのは四代目だけという可能性も考えられますね・・・。

前回の年表は大将軍たちが未来に帰らなかったことを前提としているので、今回の図表は
前回と少し時系列が変わる事になりますが、元よりそちらにも書いているように
LEGENDBB號斗丸の説明書の記述に合わせるなら一部の出来事を少し未来にずらした方が
良かったので、あとは大将軍の生まれ変わりが存在する七人の超将軍編との時間差をうまく
調整できればうまく修正できるかもしれませんが、そのあたりはまた改めて考えたいと思います。

ちなみに「SD武者ガンダム風雲録」での天下統一編の最終回では歴代大将軍が未来に帰る
描写もあり、そちらもおおむね企画書の内容を踏襲していたという事になります。
過去へ未来へ飛び回って戦い続けた荒烈駆主の物語は、こうして歴代大将軍をはじめとした仲間たちや、これまで戦ってきた敵からも祝福される大団円を迎えたのです。
 

十数年越しで「第2回」を書いてみました。

最後のコマで初代大将軍の近くにいるのが雷頑駄無でなく初代将頑駄無なのも、企画書の通りだったと考えれば納得がいきます。
バックトゥザフューチャーっぽいという意味で言えば、四代目が目を覚ますくだりは三代目のコミックのラストからここまでが全て夢だったと一瞬思わせる演出にも思える・・・というのは深読みでしょうか。

ただしこの企画書はイベントで展示されただけで、バンダイの商品として発売されたわけではないので、コミックワールド自体は現在でも様々な解釈の余地が残されており、それを色々と考えるのもSD戦国伝の面白さの一つなのではないでしょうか。


SD戦国伝人物列伝‐コミック登場の実在人物‐


SD戦国伝のBB戦士に付属の説明書に掲載の「コミックワールド」を手掛けた今石進氏が、
SD戦国伝の本編以外で執筆したコミックでは内輪ネタとして実在人物が登場した事もあります。

しかしコミック内で名前以外があまり詳しく紹介されていない人も多いので、ここでは
バンダイの発表媒体に掲載された今石氏のコミックに登場する実在人物について紹介します。

なお、本記事執筆日時点で既にご健在でない方もいらっしゃいますが、
当サイトはこのページも含めて作成日付を掲載していないため存命であるか否かはあえて記載しません。

作品名

作中の呼び名

紹介文

サルでもできるプランニング教室
愛称“サルプラ”Practice-1
天下統一編をつくろう

「SD戦国伝・天下統一編 導きの巻」セット内の「SD戦国伝古文書」に掲載。
天下統一編の企画会議の様子などが虚実交えて描かれている。

今石くん

今石進(いまいしすすむ)氏
いわずと知れた作者。
1988年レイアップ入社。BB戦士がNo.7νガンダムより「SDガンダム」のデザインラインを取り入れる事になった際にνガンダムの商品デザインを手掛け、それ以降のBB戦士のデザインと説明書掲載コミックも担当。
「SD戦国伝」でも地上最強編辺りまでの大部分のデザインと超機動大将軍編までのコミックを手掛けた、SD戦国伝の顔となった人。

小宮山さん

小宮山善一(こみやまよしかず)氏
下の名前の読みは「ぜんいち」説も存在する。
バンダイのBB戦士開発担当者。
BBは初期の頃から担当していたらしく、地上最強編辺りまでのSD戦国伝も担当した。
コミックボンボン掲載の「超戦士ガンダム野郎」にも小宮山指導員として登場。
その後はバンダイの他事業部に移った後、バンダイの商品などを作る別会社に入社し、社長職も務めている。

木嶋さん

木嶋久訓(きじまひさのり)氏
バンダイのBB戦士開発担当者。
BB戦士はNo.13 ガンダムMk-Uから担当した。
コミックボンボンで連載されていた「プラモ狂四郎」に登場した武者ガンダムをBB戦士で出したいとこの人が提案した事から、BB戦士のSD戦国伝が誕生した。
グレートメカニックGの2023年SPRING掲載記事でインタビューに答えている。

平松くん

・平松昭彦(ひらまつあきひこ)氏
レイアップでSD戦国伝の文芸などを担当。
「プラモ狂四郎」に登場する武者ガンダムをSD化したキャラクターを主人公としたストーリーを作るという前代未聞の偉業に挑み、「ガンダムでSDで戦国(というより和風ファンタジー)もの」という誰も見た事のない世界観を作り上げた人。
レイアップ退社後は玩具関連の別会社に入社。



作品名

作中の呼び名

紹介文

読切り大巨編
BB戦士
SDガンダム大混乱!

バンダイ発売の書籍「BB戦士コミックワールドスペシャル」に掲載の描きおろしコミック(同「ウルトラスペシャル」にも掲載)。
武者荒烈駆主、皇騎士ガンダム、スペリオルランダー、Xコマンドガンダムの4人が一堂に会して戦うクロスオーバー作品。

いまいっさん

今石進(いまいしすすむ)氏
言うまでもなく作者。

ガンマ浜田

浜田一紀(はまだかずき)氏
武者、騎士、ガンドラの3つの世界のジオたちの怨念が集まって合体した「ジオ・ジオ・ジオ」が悪役として登場した際、浜田氏が今石氏に「ロードジオは悪者やないっすよ」と突っ込みを入れたシーン(実話らしい)などで登場。
当時はガンドランダーのデザイナー。
当時のボンボンなどで描かれていたのと同じフルフェイスヘルメットの姿で描かれている。
ガンドランダー終了後はSD戦国伝にも関わった。



作品名

作中の呼び名

紹介文

オープニングまんぐゎ
BBのかたち

バンダイ発売の書籍「BB戦士コミックワールドウルトラスペシャル」に掲載の描きおろしコミック。
寺島氏を聞き役として、今石氏がBB戦士キャラのデザインなどについて語る。

MARSHI

今石進(いまいしすすむ)氏
もちろん作者。

てらしまン

寺島慎也(てらしましんや)氏
今石氏の「弟子」として登場。
四代目大将軍を初めとしたSD戦国伝キャラクターのデザインなどを担当。
伝説の大将軍編辺りからは大半のデザインを担当するメインデザイナーとなる。
その後も三国伝やレジェンドBBなど長きに渡り様々なSDガンダムのデザインを手掛けている。



作品名

作中の呼び名

紹介文

BB超パワーアップ
テクニック講座!!

BB戦士126武者飛駆鳥に付属していた「BB情報局vol.1」(再販では付属しない事もある)に掲載の描きおろしコミック。
G研の奥田教授、長谷川指導員によるBB戦士の連動ギミックなどについての解説。
右記のほか今石氏と寺島氏も最後のコマに登場。

奥田教授

バンダイのBB戦士担当者。
他のコミック登場担当者に比べると情報の露出が少なく、フルネームについてはコミックボンボン1993年10月号42ページの改造作例に「制作/奥田将生(おくだまさお)(G研静岡支部)」というクレジットがあり、これが奥田教授なのかもしれないが、別人の可能性も。
その後バンダイを退社したが、それ以後も長谷川指導員とは連絡を取り合っている模様。

長谷川指導員

長谷川淳(はせがわじゅん)氏
バンダイのBB戦士開発担当者。
小宮山氏に代わって1993年の伝説の大将軍編からメイン担当となる。
その後も長くBB戦士に関わり、ボンボンの歴代ガンプラ漫画「超戦士ガンダム野郎」「プラモウォーズ」「ガンプラ甲子園」全てに登場した唯一の人。
一時期SDガンダムから離れた後、三国伝以降で再びBB戦士を開発担当した。



作品名

作中の呼び名

紹介文

No.400スペリオルドラゴン発売記念
特別WEBコミック

2016年にBB戦士No.400LEGENDBB騎士スペリオルドラゴンが発売された際、バンダイホビーサイトで全3話の描きおろしコミックが掲載された。
その第1回。

お父さん

横井孝二(よこいこうじ)氏
BB戦士No.100 千生大将軍の紹介でナビゲーターとして登場。
SDガンダムといえばこの人。
バンダイが発売していた情報誌「模型情報」で1982年前後にイラストの常連投稿者だった事から、当時の編集長の加藤智氏の連絡を受け仕事を頼まれ、その後ガシャポンやパロチェンマンなどのディフォルメ商品に掲載のイラストや筐体用イラストも担当、更にガシャポン担当者の佐々野雅哉氏が新たに企画した「スーパーディフォルメガンダムワールド」でデザイナーとなった事から、その後も様々なSDガンダムのデザインを手掛ける事となった、SDガンダムの第一人者。
「お父さん」はその意味での呼び名であって、当時は独身とのこと。
バンダイが「スーパーディフォルメ」というブランドを立ち上げる上で立役者となった重要人物だが、本人はホビージャパン2012年5月号のインタビューでSD以前から既に「ロボダッチ」や「たまごひこーき」などが存在していた事を挙げ(バンダイも70年代末には既にディフォルメカーモデルを出していた)、ホビーの表現がリアルとディフォルメに分化していった時代に「ガンダムがリアルさを確立させたからこそ、相対するディフォルメも成功し、そのタイミングに僕が居合わせた」とも語っている。


私自身がよく分かっていない事もあり、簡単ではありますが、本編外のコミックで描かれた実在人物の情報。
当時は本編の登場人物だけでなくこういったバンダイ社員やデザイナーなどの人々もキャラクターとして親しまれていました。

もちろん、SD戦国伝を作ったのはこの方々だけではなく、名前が出る事もなかったバンダイ社員や
その他スタッフ、それら全ての人々がSD戦国伝の生みの親である事は言うまでもありません。

残念ながら現在これらのコミックのほとんどは載っている商品自体が入手困難な状況にありますが、
これらの人々が生み出してくれた商品や、その中で描かれた内容はこれからも消える事はありません。永遠に。